肩を撃たれた左腕はハンドルに添えるだけの役割しか果たせなかった。

 その手首に巻かれた時計の針は午前四時の手前で動きを止めていた。強いショックでどこか壊れたのだろう。安物だが長いこと使っていた時計が息を止めたのは少し残念だ。

 しかし先ほどから意識のほとんどは足の痛みに奪われ、そんな想いもすぐにかき消されていく。絶え間ない激痛にさいなまれ、額から脂汗がにじみ出る。少しの段差でもあろうものなら、飛び上がるどころではない痛みが襲う。

(まずい……意識が……)

 発熱も加わり、痛みで意識をもって行かれそうになる。いつ気を失ってもおかしくない状態に近づいていた。

 間もなく、街並みが途切れを見せ上り坂に差し掛かる。そこからわずか進めば、目的の場所へ続く林道が見えてくるはずだ。俺はかすみかけてきた頭を振り、道の先を注視した。

(もう少し……)

 長い旅はもうすぐ終わりを告げようとしていた。たった丸一日の出来事がはるか昔のことのように感じられる。おそらく、そこには五年という歳月も含まれているからだろう。

(五年か……)

 そう。あの日から五年も経ったのだ――。