「……はっ、まだ右腕も右足も動くんだよな」 

 痛みで震える体を気力で立ち上がらせる。わななく両足がとてつもなく頼りないものに思え、もはや苦笑するほかない。

(生まれたての馬かよっ!)

 ついに体を奮い立たせた俺は道路に横たわったバイクを引き起こしにかかった。 

 左足に受けた弾丸は骨を打ち砕いているかも知れない。脳天を貫く激痛に苦悶の声を
洩らしながら力を込めると、食いしばった奥歯が音を立てて砕けた。

 赤く照らされたアスファルトの上に横たわる二人の男女の表情は笑顔をたたえていた。

(そうか……それでも良いんだよな)

 熱いほど伝わる二人の想いはおそらく成就したのだろう。

 俺もそうであって欲しいと願う。


 激痛に震えが止まらない足を無理やりステップに乗せて炎の立ち上る街を抜けた。背後からは再び爆発音が鳴り響き、鎮圧部隊の猛攻が再開されていた。

 俺はそれを悲しい気持ちで聞くよりなかった。



 あと二時間――