(いまはどうにもならん!)

 もはや一刻の猶予も許されない。懺悔の念を押し殺しながら青年の横を通り過ぎる。

 自分の罪が映し出されるようで、バックミラーを覗き見るのが恐かった。けれども、俺の脳裏に今まで自分を助けてくれた人々の顔が浮かんで消えない。

「くっそ!」

 開け放ったアクセルを戻し、リヤブレーキを踏みつけると、バイクはスピンターンして進路を逆に向けた。

(お前なら迷わず助けたよな?)

 脳裏の友に俺は語りかける。友たちが優しく微笑み返す。その微笑に後押しされるように、青年の側にバイクを止めた。

「おい、何してる!」

 声に反応した青年は閉ざされた瞼から滂沱と涙を流し、天を仰いでいた。