脳裏に亜紀の笑った姿が浮かぶ。

(亜紀……)

 炎を伴った爆風より一足早く地面を突き上げる波が迫りくる。橋脚に架けられたこの道路もひとたまりもなく砕け散るだろう。

 そのとき、真っ赤に染まった風景を遮るように黒い影が視界を塞いだ。

「水島さん!!」

 突如として現れた双発の中型ヘリ。胴体の開かれたドアからひろみが身を乗り出し、
あらんかぎりの声で叫んだ。

「早くっ!」

 思考も返事もする間もなく、反射的にバイクを飛び降りる。そして開かれたドアへ飛び込むとひろみが俺の手を握った。