緊迫している状況にも関わらず、パニックに陥ることもなくただ呆然とそれを眺めていることしか出来ない。

 この時俺は確実な死を予感した。

 Uターンして逃れられるようなものではない。落下地点まではわずか十キロほどしかないだろう。一足先に俺への審判は下されたようだ。

(ごめん……亜紀……)

 愕然とする俺に残されたものは絶望しかなかった。

 地平線に閃光が走った。

 急速に膨らむドーム状の火の玉はすべてを灰塵に変えるべく大地と雲を飲み込んでゆく。その球体から地平線に沿って赤い線となり疾走する爆風。それは劇的な速度で地表のことごとくを焼き払っていった。

 その広がりを見れば、ここもすぐに飲み込まれてしまうのは誰が見ても明らかだ。すぐ直面するだろう現実に、もう俺にはあきらめるという選択しか、残されていなかった。