再び撥ねられる恐怖が痛みを押しやった。飛ぶようにして路壁へ身を寄せると、排気ガスで黒くすすけた防音壁によりかかり、バイクの傍へ歩み寄った。

 幸いバイクも壁際にあって、車の進路からは外れている。これがもう少し右側であったなら一巻の終わりだったろう。

 片方のミラーが折れ、マフラーが削られたバイクを引き起こしにかかるが、腰の激痛が思わず叫び声を上げさせた。

「ぐおお!」

 クラクションとそこにうずまく狂気に、その叫びはすぐかき消された。ようやく引き起こしたバイクのセルを回すが、今まで快音を響かせていたマフラーはへそを曲げたようにグズついた。