同じく俺もブレーキに手をかけ後ろを振り返ると、バックランプを点灯させて後進してくるジープの姿があった。

「やっぱり水島さんだ!」

「橋本さん!」

 この道を登ってくる自衛隊員ならば他には考えられない。車体を並べたジープの窓から顔を覗かせたのはあの村で出会ったひろみだった。

「橋本さん、どうしてここに?」

「どうしてって、本隊に戻らなきゃならないもの。今度は侑海も一緒だから、最期まで自分の仕事しなきゃって」

 助手席から侑海が手を振っている。俺は手を振り返しながらひろみに言った。

「すごいな、あなたは」

「すごくなんかないわよ。水島さんはどうしてこっちに?」

 人のために身を捧げるひろみに対して少し言いにくかった。

「……別れた妻を捜してて、大分の実家にいると思ってたんだけど居なかった」

「もしかして津波に……」

「いや、福岡に居るのが分かったから、今からそっちに」

 福岡へ行くという言葉を聞いて、ひろみは表情を曇らせた。

「身内の恥を晒すようで言いたくないんだけど、福岡で自衛隊の部隊がいくつか暴走してて、鎮圧部隊と衝突してるの。かなり危険だと思う」