「アンタの気持ちも分かるよ。けど俺は見捨てては行けないよ」

 その目は頑とした意志を見せていた。さんざんおどけていた男が初めて真剣な顔を見せる。

(怖い顔すんなって……)

 奴に任せておけばそれほど足手まといにはならないかも知れない。俺は折れた。

「この先から歩いてきたならどこかに親が居るかも知れんな。どうせ通り道だ。連れて行くか」

「死んでたらどうするよ?」

「お前に任せる」

 自分のバイクに乗せようとあさきちが少女を抱きかかえた。すると、

「いやだ、いやだあ!」

 と、少女は駄々をこね、ついに泣きだしたようだ。

「おいおい、何よ?」

「あっち」

 伸ばしたひとさし指は俺に向けられていた。

「俺?」

 思わずつられて自分を指差した。

 抱えあげて後ろに乗せ、ボロボロにひび割れたヘルメットを被せる。サイズは大きすぎるが無いよりははるかにマシだ。