「バイクの調子が悪いんですけど、ちょっと見てもらえます?」

 小綺麗なマシンが並ぶ店内を通らず、裏手の作業場に直接姿を見せたその女性は、やや長身で、およそバイクに乗っているようには見えない白のロングスカートと花柄のキャミソールを身につけていた。

 ショートのボーイッシュなストレートヘアは小さな顔とよくマッチしていて、涼しげな目元と筋の通った鼻が印象的だった。

 その美しさについ見とれた俺は、後で話を聞くと口を半開きにし、ひどく間抜けな顔をしていたらしい。

「あの……」

 再び声をかけられて我に返った俺は、手に持ったキャブレターを灯油の入った容器に落としてしまった。

「あっ!」

 灯油のはねる音とともに、匂いのきつい液体が周囲に飛び散る。俺は慌てて声をかけた。