「なにそれ? あんまりだし!」

 少しヘコんだあさきちだったが、バッグから重ね着用のセーターを取り出して少女に着せると、俺に向き直った。

「連れて行くしかないっしょ」

「馬鹿言うなよ、危ねえだろ。それに親だって捜してるかも知れないだろ」

「アンタ、親が生きてると思う?」

 それを言われると返す言葉がない。あさきちは言葉を続けた。

「ここまで来たんなら途中で見てきたっしょ」

 言う通りだ。こんな小さな子供がひとりで居ることは、イコール親が殺されたことを意味する。

 しかし俺は焦り始めていた。正直バイクを止めてしまったことにほぞを噛んでいた。