「おいおい、よく見ろって」

 それは年の頃、六、七歳の少女だった。白いパジャマに身を包み、素足ではあるがちゃんと二本付いている。

 俺はバイクを止め、その少女に近付いた。

 夜の山間部の空気は想像以上に冷たい。薄手のパジャマ姿の少女は見たところまだ七、八歳だ。その小さな体をさらに縮めるようにして震えていた。

 ライトが眩しいのだろう。目を細めてこちらを窺っている。

「こんなところでどうした? お父さんは?」

 敵意のない俺の声に安堵したのだろうか、返事は大きな泣き声で返された。

「よしよし、大丈夫、大丈夫。もう心配ないからね」

 その少女の姿は沙羅や佳絵を思い出させ、思わず抱きかかえた。

 泣き止まない子供をあやすのは実は得意技だ。間もなく少女の嗚咽が止まった。長い睫毛に光る涙のつぶが、どれだけ不安だったかを物語っているようで胸が苦しくなった。


「お母さんはどこに行った?」

 小さな首を横に振るばかりで要領を得ない。たった一言ぽつりと洩らした。

「怖い」

「大丈夫だよ。なにが怖いの?」

 少女の小さな手はあさきちを指差した。