吸い込まれそうな暗闇を見ながら、あの時失ってしまった相棒に想いを馳せた。あの後アイツはどんな最期を迎えたのだろうか?

 単なる金属とプラスチックを組み合わせた無機質なマシンだが、バイク乗りにとっては恋人にも等しい。感傷に耽る俺をあさきちが引き戻した。

「手前のインターまで戻るしかないっしょ。あんた道分かるの?」

「え? ああ、下は210号線が通ってるから、玖珠インターまで戻ればすぐに取り戻せる」

 今来た道を引き返し、次のインターを降りて国道を登った。

 延々と続く登り坂は速度を鈍らせ、それはまた新たな焦りを生む。時計のライトを点けて時刻を確認すると、午後九時になろうとしていた。

(まだ十分間に合う)

 亜紀が暴力の渦巻く街を離れていたことが少し不安を軽くしていた。

 だが、その先の国道もまた寸断されていたのは計算外だった。