悲しんだ自分が損した気分だ。思わずそのゴツい肩に拳をいれた。

「痛った! ちょっ……俺命の恩人よ、そりゃないっしょ」

「冗談じゃねえよ、人がどんな気持ちで……」

「おっ? もしかして泣いてね?」

「泣くかボケ」

「いやいや、ちょっと見せてみ」

「あー、うるさい!」

 思わぬ出来事に、ここしばらく感じたことのない喜びに胸が満たされる。本当に嬉しい。生きていただけでも奇跡に思えるのに、まさか再会できようとは……

 ひとしきり喜びをかみ締めると、今度はあさきちから質問された。

「で、アンタは何でこっちに?」

 俺は簡単にことの経緯を話して聞かせた。これから大分へ向かうと言うことも。

「偶~然。俺も大分に行くつもりだし」

「何で?」

「死に場所を思い付いたのよ。ほら、俺って温泉好きっしょ」

「しょ……て、知らねえよそんなこと」

 きっと右脳だけで生きているのだろう、こいつは。

「とにかく温泉に浸かりながら死ぬことに決めたのよ」

「お前アホかあ!」