「亜紀! 俺だ、真樹夫だ!」

 続けてドアを激しく叩いた。そのまま繰り返し叫ぶ。

「亜紀! 亜紀!」

 最悪の事態が頭をよぎり、躊躇せずドアノブを引いた。

「亜……」

 あっけなく開いたドア……。

「亜紀?」

 玄関を開けると、火災によるオレンジの光が窓から薄く室内を照らしていた。懐かしい部屋へ足を踏み入れる。そう、何もかもが懐かしい。しかし今はその感傷に浸っている場合ではない。

「居ないのか?」

 廊下を通り、リビングを覗く。

「俺だ、真樹夫だよ」

 寝室へと足を運ぶ。

「亜紀! 返事をしてくれ」

 バスルーム、トイレ、クローゼット……どこにも亜紀の姿はなかった。

(まさか……そんな……)

 リビングで立ちすくむ俺の目に、テーブルの上にポツンと置いてある小さな箱が映った。