恐怖に負けた奴から人間であることを放棄するのだ。そしてその恐怖は恐るべき伝染力を持っていた。

 街の中心部へと繋がる大きな橋は、崩れてその働きを失っていた。ここから上流への橋までまたもや大きく迂回しなければならない。

(どこもかしこも……)

 焦りが頂点に達する。

 それは苛立ちと怒りにも繋がった。荒々しくアクセルを吹かしてリアタイヤをターンさせる。そして今きた道を引き返そうとしたその時、ライトが暗い夜道に幾多の人影を映し出した。

 鉄パイプや木切れなどを手にもてあそびながらこちらを睨む十人程の集団が道を塞いでいる。

 後ろに逃げ道はない。もはや己で切り拓く以外に道はなかった。