「さよならだ、真樹夫」

「ああ」

 見送る家族に手を振った。

 涙を振り切るようにスピードを上げる。俺の体を引き留めるように様々な思い出が去来する。それでもアクセルを開かなければならないのだ。

 俺を育ててくれた父、母、兄たちが暗闇に消えていく。けれども、俺に刻まれた記憶はいつまでも消えないだろう。


 市内に近づくと、空が赤く染まっていた。不吉な予感が頭をもたげたその刹那、夜空に閃光が飛び交っているのが見えた。

(またやっているのか……)

 ここにも戒厳令が布かれている。おまけに人口数万にしか満たない先程の街に比べて、ここは百万を超す人口を抱えている。

 アクセルを握る手にいっそうの緊張が走った。