「ただいま!」

 雨戸はすべて閉め切られてはいるものの、変わらぬ家の玄関の前で声をあげた。車庫には兄貴の車も停まっている。家族を連れて来ているのだろう。そのことに胸を撫で下ろした。

「俺、真樹夫」

 すぐに中から廊下を走る音が聞こえ、続けてカギが外された。

「真樹夫!」

 勢いよくドアを開け放して顔を見せたのは老いた母親だった。俺の顔を見るなり涙を溢れさせた。

「よく……よく遠くから……」

 嗚咽混じりで後は言葉にならない。俺は母親の肩に手を回すと、中へと促した。

「よう帰ってきたな……」

 玄関の中では父親が感無量の面持ちで目を赤くしていた。その後ろには兄貴とその妻、そして二人の小学生の姪っ子が顔を揃えている。