トンネルのわずかな隙間から漏れてくる水が路面に広がってゆく。俺はその中でバイクを止めた。

 完全に封鎖されたトンネルの出口、そこに奴の姿はなかった。

 例えようのない虚無感が胸を締め付ける。波に飲まれる姿を想像して涙が溢れた。

「こんなのが……死に場所って……」

 たった数分の交わりしかなかった男だった。

 でも理屈じゃなかった。こみ上げる感情は抑えきれない。力なくバイクは再び走り出す。亜紀との距離が近くなった事への高まりと、友を失った悲しみに胸のうちが張り裂けそうだった。

 すっかり闇に包まれた高速道路は、ライトすら灯ってはいない。そんな闇を切り裂くように一本の光の筋がその速度を上げていった。



 あと十二時間――