かつて経験したことのない緊張に体を震わせながら、駐車場へ向い、バイクにキーを差し込む。

 久しぶりに火を入れる750ccのエンジンはぐずつくかと思われたが、意外や簡単に目覚め、軽快にタコメーターの針を跳ね上げた。

 イタリア製のL型ツインエンジンは、利口な日本車とは違う、不整脈のような独特のアイドリングで周囲の空気を震わす。

 そのエンジン音に道路にたむろする自動装銃を持った四人の自衛官が何事かと目を向けた。いとも簡単に発砲した奴らだ。何をしてくるか分かったものではない。

 アクセルグリップを思い切り絞ると、けたたましいタイヤのスキール音を撒き散らしながら道路へと飛び出した。

 街の様相は意外なほど平静を保っていた。京都駅そばの陸橋を駆け抜け1号線を目指す。東寺の交差点を過ぎれば左折。まもなく名神高速の京都南インターだ。