「ヘルメットが無いと死ぬぞ」

 白いオフロード用のヘルメットもくれた。すべて差し出してくれた老人に感謝のしようがない。

「本当にありがとうございます」

 礼を言ったがまだ頼みたい事がひとつあった。

「すいません、もう一つ頼みがあります」

 俺は傍らの早由利に視線を向ける。その意図はすぐに早由利にも分かったようで、自ら言葉を挟んで言った。

「おじいさん、あたし……ここに居ても良いかな?」

 老人は少し困ったような顔をしたが、小さく頷いた。

「ありがとう! あたし真樹夫にフラれちゃってさ……誰も……頼る人いなくて……独りじゃ寂しくて……」

 そこから先は何度も息を詰まらせ、何を言っているのか要領を得ない。

「親父も本当は……どこに行ったか……起きた時には居なくてさ……」