シャッターは開け放たれ、狭い店内にはバイクが数台並べてあった。

「信じられない」

 目を疑いながら店の中に足を踏み入れると、ひとりの老人が踏み台のような低い椅子に腰掛け、バイクの整備をしていた。どうみても常人の精神構造ではないだろう。

 白い無精ひげを生やした気難しそうな顔を窺いながら、おずおずと声をかけた。

「あの……」

「はい、いらっしゃい」

 無愛想にそう言うと、老眼鏡を少しずらしてこちらへ顔を向ける。

「なにか?」

 どこか気圧されるような雰囲気を漂わせた老人だった。

「あの、バイクを譲って欲しいんですが」

「譲るってなどういう意味だ。うちはバイク屋だぞ」

「え?」

「だから商売だって言ってんだ」

 この老人は何も知らないのだろうか? いや、そんなはずはない。先ほどの隕石群の落下の跡は、この地にもそこかしこに見受けられる。

 知らないはずがない。