いつの間にか随分と郊外まで来たようだ。途中、自転車を拾ったおかげでかなりの距離を稼ぐ事が出来た。

 人の気配はほとんどなくなり、閑散とした景色が広がっている。

 やたらと喋る早由利のせいで時間の流れを感じなかったが、一分一秒を争う今、自転車での移動は致命的なのかもしれない。

 そんな焦りは苛立ちに変化しかけるが、そのたびに不思議と早由利の冗談がツボにはまり、心を和らげた。

「あー、あれバイク屋じゃない?」

 肩越しに伸びた早由利の手が指差す方向に目をやると、確かに小さなバイク屋の看板が見えた。

「あった!」

 狂喜する足がペダルを漕ぐ速度を早め、すぐに目的の店先で耳障りなブレーキ音を立てる。県道沿いにぽつんと建つその店の脇には使い古されたタイヤや、廃車になったバイクが山のように積まれている。

 どうみても繁盛している風には見えない。

 しかし驚いたことに、

「うっそお? こんなときに」

「開いてんのか、もしかして?」