(亜紀……)

 幻聴とは思えないほどのリアリティがそこにはあった。もう一度迫ってきた早由利の唇を払いのける。

「俺は亜紀を愛している」

 残念そうな早由利の表現を無視し、足を速めた。愛する人がいなければ、自分も簡単に堕ちて、あの連中の仲間になっていたのかもしれない。その事実にぞっとした。



 あと十四時間――