「水島」

「下も!」

「なんだよ、真樹夫だよ。お前は?」

「あたしは早由利。藤野早由利」

 少し腕がだるくなっておぶり直した。

「あー、いまお尻触ったあ」

「触らなきゃどうやっておぶんだよ。それより家族はどうしたんだ?」

「お父さんは出ていった。別れたお母さんのとこ行くって言って。あたしは彼氏と過ごしたかったから残ったんだ。お父さんもあたしのこと嫌ってたし……」

 早由利の高かったテンションが次第に低くなってきた。

「で……彼氏は?」

「それがさ、聞いてよ。最期は綺麗にして過ごそうと思って、メイクばっちりで彼氏の家に行ったらさ……目の前で他の女犯してたんだよ……信じられる?」 

 その声は、最後は涙声に変わっていた。

「男って結局やりたいだけなの?」

 解る部分も確かにある。

「真樹夫はどうだった?」

 どうしたもこうしたも、俺はひたすら亜紀に会いたいだけだ。

「変な気にならなかった?」

 なるわけがない。

「真樹夫……しよっか?」