地球最後の24時間

「夢?」

「うん、女の子を産む夢。でもね、すごくリアルだったの。それなのに周りの景色が全然リアルじゃなくて」

「はは、夢って……」

 そう言いながらも亜紀らしいと微笑ましく思った。その後は女の子の名前を次々に挙げては二人でああだこうだと話し合った。

 その娘はどんな顔でどんな将来で、どんな男と──

「ああー、結婚はしないよ」

 結婚の話に及ぶと、俺は話の腰を折った。

「ええ、なんで?」

「だって、他の男になんて取られたら嫌だもん」

 そう嘯く俺を見て、亜紀は

「馬鹿じゃないの?」

 と、キョトンとしたあと笑い出した。俺もそれを見て笑っていた。

 二人のマンションに着くとエレベーターが故障中で、工事関係者がせわしく声を掛けながら修理をしていた。