弾丸が大気を切り裂く音が耳元を掠め、そして暴徒らの悲鳴がこだました。少女の頭を抱え這いつくばるなか、火薬の匂いと悲鳴と銃声、そして……硬い地面に金属の軋む音と振動を聞いた。

（なんだ？）

　悲鳴と銃声が止んだ。

　しかし甲高い騒音と引き換えに耳を突いたのは重苦しいエンジン音だ。伏せた頭を上げ後ろに目をやると、危機が去ったと安堵したのは間違いだったことがわかった。

　アスファルトが震え、激しい重低音を響かせながらその巨体が猛スピードで突っ込んできていた。

（……！）

　大型の十トントラック。それは銃撃くらいではひるみそうにはない。

　目前の恐怖に体が硬直し、思わず歯を食いしばった。刹那、異様な風切り音が耳をつんざく。次の瞬間、鼓膜が破れそうな爆発音と共にトラックは火を噴いてその巨体をよじらせた。