何故助けたのだろう?

 住宅街が途切れ、大きな通りに飛び出した。

「こっちだ」

 迷うことなく市街地への道を選んだ。どこかで車かバイクを見つけなければ万事休すだ。見つけるには、市街地のほうが確率が高いと思われた。

「トラック持って来い!」

 すぐ後ろで暴徒の叫ぶ声が聞こえる。奴らにトラックを持っているのがいるだろう。

(裏目にでたか?)

 汗で霞む視界の中で乗り物を探した。しかし一直線に伸びた道の先には何一つ見当たらない。その凝らした目線を遮るように、突然一つ先の交差点から自衛隊員らが飛び出し、横一列に隊列を組み銃を構えた。

 一瞬戸惑う俺を押し退けるようにして前に出る少女。

「助けてえっ!」

 そのまま両手を挙げて声をあげた。

 その行為に俺は激しい危機感を感じ、思わず足を蹴り出す。

「馬鹿、伏せろ!」

 タックルするように飛びつくと、両腕にその小さな体を包んだまま地面に転がった。危機感は的中していた。間髪入れず鳴り響く銃声。

 それはためらいもなくこちらに向けて発せられたものだった。