四軒ほど向こうの家から火が上がると大人数の歓声が響き、左奥の家からは女の子の叫び声と熟年女性の悲鳴。右手の家からは壁を壊すような激しい破壊音――。

 狂った矯声と断末魔の叫びが渦巻いていた。

(どれだけ居るんだ……?)

 右も左も、前も後ろも……狂気に満ちている。汚い欲望だけがこの街を支配しているようだ。一刻も早く逃げ出さなければ巻き込まれるのは必至だった。

 歩き出した俺の左目に玄関を叩き壊そうとバーレルを振るう集団が見えた。右目には家の主人だろうか? 男が集団で暴行を加えられている。遠くで銃声が鳴り響いている。自衛隊による鎮圧だろう。

(そりゃ戒厳令も布かれるさ……)