あなたは講師

電気を消して少しすると、さっきまでとは違う波動の寝息が聞こえてきた。

「みんな、寝ちゃったんだ…」


私は何度も目を閉じるけど一向に眠気がこない。一度思い出しちゃったらなかなか頭から離れない。

「ふぅ…」
小さくため息を吐く。

「りな…?」
私は肩をびくりとさせて驚いた。

「寝れねぇの?…手、かしてみ」
声の正体が拓馬くんと分かり、すっと手を出した。
すると、大きくてごつごつした男らしい拓馬くんの手が私の手に重なった。

「こうすると安心すっから、目を閉じて深呼吸してみ」

私は素直に目を閉じてゆっくり息を吐き出した。

喉の奥にあった、かすかなわだかまりが呼吸をするたび消えてなくなっていくような気がした。