「ようちゃん、なんで理科室きたの?」
「うーん…なんとなく」
ようちゃんは苦笑いをしながらいつもの椅子に座った。

「ようちゃん、福岡に行くって本当…?」
「本当だよ…、てか今日はやけにようちゃんって呼ぶな!」
少し頭をあげて天井をみるようちゃんにつられて、私も見上げた。
少し黒ずんだ天井は校舎の古さを物語っていた。

「…もしかしたらさぁ、ようちゃんって呼ぶの最後になるかもだから…今日いっぱい呼んでおくの…!」
忘れないように…と付け加えた私をようちゃんはどう思ったのかな…?

「最後ってなんか嫌だなぁ」
なんて、そんなの知ってるよ。だって私が一番そう思ってるから。

「なんで嫌なの?」
意地悪に笑ってみせる。
「…なんとなく☆」
私の意地悪な笑みとは違う優しい笑顔のようちゃんから視線をそらした。


涙が出そうで…、また天井を見つめた。

「……なんとなくって…ズルイよぉ…」
私の声は今にも泣きそうな弱々しい声だった。

「俺には言えねぇよ…」
私と同じ位弱々しい声なのに何故か優しい笑顔だった。