優子のこれから行く先を示した人だ。優子はこの男から、孤児施設に行くのだと告げられた。


「突然お邪魔して済みません。玄関が開いていて、声が聞こえたものですから。少し様子を窺わせてもらいました」


 男は老婆に突然の訪問と不法侵入を詫びた。


「さあ行こう、優子ちゃん」


 男は優しく手を差し延べる。

 優子は不安そうに老婆を見つめる。老婆は微笑み、行きなさいと言った。


「私は優子を養いきれない。だから、施設に行きなさい」


 傷ついた顔をした優子の肩を撫で、続ける。


「大きくなったら、ここに戻って来なさい。待ってるから」


 男は驚いたように老婆に言う。


「お婆さん、優子ちゃんが行くのは児童養護施設ではなく、孤児施設です」

「じゃあ児童養護施設にして下さい。この子の帰る場所なら、ここにあります。児童養護施設は家庭の都合で預かる場所でしょう」

「ですが貴女とこの子に血縁は、」

「私の籍に養子として入れます。それで良いでしょう」


 老婆の言葉に、男は言葉を失った。

 更に、優子が嬉しそうに笑っているのを見て、目を瞠った。表情の乏しい子だったはずだと、男は驚きを隠せない。


「優子。今日からここがお前の家だ」

「お婆ちゃん…」

「この子達と、お前の帰りを待ってるよ」


 老婆と子犬達の優しい声に、優子は笑顔で頷いた。


「行ってきます」


 冬の風は冷たく、人の体を冷やして行く。しかし、人の心の温かみを感じられるのは特にこの季節。

 笑顔の意味を思い出した少女は、帰る場所をも得ることが出来た。


 笑う門には福来る。


 ──スマイル、スマイル。





*End*


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 フィクションです。
 施設に関してですが、あまり詳しく調べる事は不可だった為、知っている限りでしか書けませんでした。
 もし詳しく知っていて、おかしい点などがあればご指摘お願い致します。
 勢いで書いてしまい、読みにくい文章でした。済みません。