白銀の景色に、シルエット。

「お父さん……」

「ま、二人に任せよう」


 信用されているという事が、逆に手を出せない状況だと取ってしまうのは、俺がおかしいのだろうか。

 普通なら、信用しているぞと言われて快く手を出せる男はまず少ないと思う。


 そんな事を考えている内に、着替えた彼女がリビングに入って来た。


「日向、こっちに座って」


 彼女の母が隣を示すと、彼女はぼんやりしたまま椅子に腰かけた。

 真ん中に四つ置かれたオレンジゼリーの内の一つを、スプーンとともに彼女に差し出す。

 すると彼女は微かに笑って、それを受け取った。蓋を開けて一口運んだところで感想を訊く。


「うまいか?」


 彼女はこくりと頷き、黙々とオレンジゼリーを食べた。

 そんな彼女を見ていると、何故だか胸が苦しくなった。

 こんな風にオレンジゼリーを食べている時間でさえ、あの頃は幸せだったのに。ついそう思ってしまう。


「日向、明日の夜ね、花火大会があるのよ。速水君が連れて行ってくれるんですって。行くでしょう?」

「…………」

「日向?」


 彼女は少し考え込むような仕草をして、それから小さく頷いた。


(日向……?)


 しかしその姿は寂しそうで悲しそうだった。

 花火大会に行くのが嫌なのだろうか。もし嫌々行くのであれば、連れて行く意味がない。


「立野。外出になるんだぞ? 大丈夫か? なんだったら、ここで見てもいい」


 俺の言葉に、彼女は顔を上げた。

 今にも泣き出しそうに、悲しそうに彼女の目は潤んでいる。


「立、野……?」

「行きます」


 消え入りそうな細い声で答えると、彼女は再びゼリーに手をつけた。


 嫌々行く訳ではない事は分かったが、どうしても彼女の目が気になった。


 ──彼女は、何を訴えたいのだろうか。