白銀の景色に、シルエット。

「だから、貴方とお祭りに行けるのが嬉しいって喜んでたの」

「……そう、ですか」

「ふふ。あの時の日向は綺麗だったわー」


 確かに、あの時の彼女はとても綺麗だった。

 紺色の生地に鮮やかな花が咲いた浴衣を着て、結うのが難しい髪にピンを挿して、髪が頬にかからないようにしていた。


 精一杯のおめかしをして現れた彼女に、俺は自分の中の恋に気づいたんだ──。


「なあ、速水君。あれからもう一年だ。誰か、良い人はいないのか?」

「……え?」

「あの時はああ言って君を縛りつけてしまったが、もういいだろう。君にもし良い人がいるなら」

「いえ、お父さん。俺は、彼女の記憶が戻るまで……彼女が俺を見てくれるまで待つつもりです。俺には、彼女しかいませんから」

「速水君…。ありがとう…」

「謝らないで下さい。寧ろ、こっちが感謝しています。彼女の傍にいる事を許して下さってありがとうございます」

「君が気に病む事はない。あれは事故だ、誰も悪くない」


 ──そう言って許してくれた貴方がたに、俺がどれだけ感謝しているか。


 確かに、一向に思い出す気配がない彼女に苛立つ事もあった。傍にいるのが嫌になった事もあった。

 それでも、俺は彼女が好きなのだと何度も気づかされた。

 もう一度彼女の笑顔が見れるなら、死んでもいいと思えるほどに愛しているのだと。


 きっと、この先どんな女と出逢っても彼女ほど愛せる女はいないと思う。


「そうそう、明日は帰さなくてもいいわよ」

「っ、えぇ?!」

「あの子ももう子どもじゃないもの。ねぇ、お父さん?」

「日向が望むなら構わん」

「決まりね」


 唖然としている間に、二人は話をまとめてしまった。

 どこの世界に、大事な一人娘を易々と差し出す親がいるのだろうか。いや、それとも俺がおかしいのだろうか。


「待って下さい。そんなに俺を信用していいんですか? 俺、お二人が思うほど立派な人間じゃありません」

「誰も君が立派な人間だとは言っていないさ。信用はしているがな」