「ティア……?」


 ティアの体が、下から徐々に消えてゆく。まるで、風に染まるかのように。


「あの桜貝の首飾りは私の命そのもの。首飾りが私から離れてしまえば、私の命は尽きる。それが、神様が私に与えた掟」


 ティアは静かに俺を見据えた。


 つぅっと、冷や汗が一筋、頬を伝う。


「きちんと話しておくべきだったわね。ごめんなさい」

「ティア!」

「楽しかった。ありがとう、カイ。……大好き」


 ────っ?!


「ティア~~~!!」


 ティアは笑って。そして、一筋の涙を流して。

 風に染まっていった。


「何で。悪いのは俺の方…」


 止めどなく、涙が溢れて来る。


 俺だって好きだった。ずっと、大好きだった。初恋だった。


 ごめん、ティア。ごめん。ごめん…。


 ──泣かないで、カイ。私はずっと、カイの傍にいるよ。

 ティアの優しい声が、風とともに聞こえたような気がした。


*End*


――――――
大切なモノはいつか消える

もしかすると他人の手で
もしかすると自身の手で

どれもこれも
かけがえのないモノ

貴方は大切にしてますか?