満と付き合い始めて、一週間が経過した。


 朝は自宅まで迎え、昼食を共にし、放課後はお茶をして家まで送ってやる。

 徹底的に尽し、必要性があれば甘い科白を囁いてやる。


 満がとびきりの笑顔を見せても、心が揺れる事はなかった。

 計画は完璧だ。復讐は遂行する。それでやっと、羽名も俺も救われる。


「ねぇ、啓介。私のどこが好きなの?」


 ……愚問だな。お前の好きなところなんてある訳がない。

 寧ろ、その逆。殺してやりたいほど憎い。


「勝ち気なところかな」

「え~? ひどーい!」

「嘘。そんなところが好きだよ」

「本当? 嬉しい! 私も啓介が大好き! 啓介がいないと死んじゃうよ」


 ……へぇ? じゃ、死んでよ。今すぐ消えてよ。俺の前からさ。

 まぁ、楽に死なせやしないけど。


「そんな事言うなって。満が死んだら、俺生きて行けない」


 ──羽名がいないと、俺は。


 満、お前が死ねば良かったんだ。……んで、お前が生きてんだよ。

 俺の隣にいたのは、お前なんかじゃなくて羽名だったのに。


 羽名……。


「そういえば最近ね、無言電話が多いの。私一人暮らしだから何だか怖くて」


 お前の所に無言電話かける奴なんて、一人しかいねぇだろ?


「ストーカーだったらどうしよう。ねぇ、啓介」

「大丈夫、俺がついてるから。何かあったら電話して。駆けつけるからさ」

「うん…」


 こんなの、序章だ。本当の幕開けはこれから。

 覚悟しろよ、阿久津満。徹底的に追い詰めてやる。















 一日に十回の無言電話。『死ね』『殺す』と新聞の切り抜きを張りつけた手紙を毎日郵便受けへ。

 休日は後をつけ、背を押し階段から突き落とそうとする。


 日に日に満の顔色は悪くなって行った。


 放課後、二人きりの教室。


「ねぇ、啓介。怖いよ…」


 満がそっと、俺の手に自分の手を絡めて来る。


「大丈夫。俺がついてる」


 俺はそれに応える。


「助けて…!」