暦は勉強をしているらしく、机に向かっていて、十月は二段ベッドの下の段で雑誌を読んでいた。


「湖、小絃ちゃん。いらっしゃい」


 暦はゆっくりと体を二人に向け、笑みを浮かべた。


「入る時はノックぐらいしろっつーの」


 十月は二人に目もくれず、雑誌を読み続ける。

 暦に座る事を勧められ、二人はベッドの脇に腰を下ろす。


「暦、勉強中だった?」


 湖は少し不安げに尋ねる。すると、暦は優しく湖の頭を撫でて言う。


「レポートの提出期限が迫っていてね。でももう、あと一息なんだ」


 暦は、湖や小絃や十月より三歳上の大学生だ。

 湖や小絃や十月は高校生なので、いろいろと違うところがある。


「明日休みでしょ? だから、みんなで遊びに行こうって誘いに来たの」

「へぇ。いいね、それ。どこ行くの?」

「最近出来たゲームランド。そこのミラーハウスが凄く面白いらしいの!」

「……湖。前もそう言って真っ先に迷子になったよね?」

「今回は大丈夫!」

「本当にチャレンジャーだな、湖は」

「ね、いいでしょー? 行こうよー」


 湖は期待に満ちた上目使いで暦を見る。


「だってさ。行くだろ、十月」

「んー。ま、暇だしな」

「決まりだな。行くよ」

「ほんと?! やったね、小絃」

「えっ? あ、うん」

「お昼の2時に二人で来るから準備しといてね!」

「分かった」


 明日、土曜日。

 四人でゲームランドに行く事が決まった。


 そこで、それぞれの恋が空回りする事になるのを、まだ誰も気づいていない。