『な……なぁに、それ! 変な冗談やめてよねー』

「冗談でこんな事言えないよ! お姉ちゃんはもう、一年前に」


 何、それ。私が死んでる?

 つまりそれは…。


「お姉ちゃんが理人君と付き合い始めて一年目の日に……お姉ちゃん、交通事故で死んじゃったの…。もう、お姉ちゃんと理人君が出会ってから二年経ってるの」


 あれから、二年。一年じゃない。

 そうか。だから二人とも高校生なんだね。

 だから理人は別の子と。


『あの子、新しい彼女?』

「……うん。お姉ちゃんが死んでから、ずっと理人君支えてて」

『私はもう過去の人?』

「お姉ちゃん…」

『そんなの嫌っ!!』


 理人が女の子と座っているベンチに向かって駆け出した。


「お姉ちゃん!!」


 苺紅の言葉は、今は耳に入らない。


 告白して来たのは理人の方だよ?

 断るのは気の毒で、少しずつ好きになれるかもって思って頷いたのに。

 死んだらもう用なし? そんなの絶っ対に嫌!


『理人っ。 ねぇ、理人! 聞こえるでしょ? 見えるでしょ!』


 理人は私に見向きもしない。隣に座って話している女の子を見つめている。

 とても優しい目で。私を見ていた目で。


 やめてよ…。そんな目でその子を見ないで!


『何で…? どうして笑ってるの? 何で幸せそうなの? どうして私だけ死ななきゃいけないの!』


 理人は全く聞こえていない様子で、二人ベンチから立ち上がって肩を並べて歩き出した。


『理人! 何で伝わらないの!』


 ……っ、寂しいよ。何を言っても気づいてくれない。

 苦しいよ。


「お姉ちゃん…」

『私だけこんな思いするなんて嫌! 理人も一緒がいい!──そうだ、理人を殺せばいいんだ』

「お姉ちゃん?!」

『そしたら一緒にいられる。もう一度…私を見てくれる』

「やめてよ、お姉ちゃん!」

『苺紅? 邪魔する気?』


 一瞬体を震わせたが、苺紅は私を見据える。