白銀の景色に、シルエット。

「やっべ……急げ!!」


 日向の手を引き、神社の階段を駆け登る。その間、十発ほどの花火が上がる音が聴こえた。


「はぁ、はぁ、はぁっ」


 俺も彼女も久々に全力疾走したせいで、花火以前に呼吸を整えるので精一杯だった。


「大丈夫か、立野」


 俺が声をかけると、彼女は額の汗をハンカチで拭いながら、こくんと頷いた。


 それから夜空を見上げる。


 ドオォォンッ!!ドオォォンッ!!


 と、何発も何発も間髪入れずに上がる花火に彼女は見入っていた。

 真剣に花火を見つめている彼女に、俺は声をかける事が出来なかった。その姿は普段の彼女とは雰囲気が少し違っている。

 いつもは頼りなさげに丸めている背中を、今日はしっかりと伸ばして姿勢を正していた。そのせいか、凛とした印象を受ける。

 そんな彼女の姿を見るのは、初めてな訳ではなかった。何かを決めた時、彼女は姿勢を正してまっすぐに何かと向き合うのだ。

 自分の曲げられない意見を述べる時も、彼女は今と同じ姿勢を取っていた。


 ──今、彼女は何を決めたのだろうか。


 大切な何かだという事は、その表情からも分かる。昨日からさっきまでの寂しげな表情と、何か関係があるのだろうか。


 良くない事でなければいいと、心から思った。

 彼女が決めたその何かが、彼女を幸せに導く手立てであればいいと心から祈った。


 少しして花火は終わる。

 名残惜しそうに、彼女は空を見上げる事をやめた。そして隣に立つ俺を見る。


「立野?」


 自然と、俺達は向き合った。

 彼女は澄んだ瞳でまっすぐに俺を見つめる。


「速水さん」


 いつもと違ってしっかりした声音。


「ハイ」


 思わず敬語で返してしまう。


「もう、うちへ来るのはやめて下さい」


 ──想定外の、言葉だった。

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。聞き慣れない単語に、その意味を理解するのに時間がかかった。


 つまり、あれだ。立野家への出入りをやめろという事だ。