白銀の景色に、シルエット。

 日向はいつも笑顔で、俺が暗い顔してる時もずっとにこにこしてる奴だった。

 そんな日向だから、俺は親友として心を開いていたし、好きになった。


 家ん中がゴタゴタしてた時も日向の笑顔に救われた。ただ笑って、何も訊かずに傍にいて寄り添ってくれた。

 そんな彼女に感謝していた。だから俺は、彼女を一生幸せにしてやろうと思ったんだ。

 いや、誓ったんだ。ガキだった自分自身に。


「速水さん」

「あ…、何だ?」

「そろそろ、花火」

「あ、もうそんな時間か? 悪いな、ぼんやりして全然回ってねぇ」

「いえ……」

「綿飴はもう食ったな。何食う?」

「もう、結構です」

「つったって、まだたこ焼きと焼き鳥と綿飴しか食ってねぇだろ。しかも半分ずつ」

「本当に、もう」

「そうか?」

「はい」


 結構大食らいだったんだけどな、日向。記憶喪失になるとそういう事まで変わるのか…。


 そんな事を考えながら花火が上がる広場の方へ向かおうとすると、彼女が俺の服の裾を掴んだ。

 首を傾げながらも彼女を見ると、やはりまだ寂しげな顔で俺を見ていた。


「遠くても良いです。花火は、静かな所で観たいです」

「人に酔ったのか?」


 俺の問いかけに彼女は少しばかり困ったような顔をして、小さく頷いた。

 どうやら、本当は人に酔った訳でもないらしいが、そういう事にしておこうというその場凌ぎが窺える。


 とりあえず、彼女の要望だ。応えない訳にはいかない。


 俺は彼女を連れて、以前この花火大会に来た時に花火を観た神社に向かった。

 あの時も、広場に向かおうとした俺に静かな所で観たいと言って、大会が開催されている場所から少し離れた神社に移動した。

 その神社は古く、あまり人が近寄らない事は密かに有名だった。


 神社に着く少し前に、花火は上がり始めた。


 ヒュゥゥゥ……ドオォォンッ!!


 花火の上がる独特の騒音が町中に響き渡る。