優しい魔王と優しい勇者の悲しいお話

まだ幼さの残る少女とは違い、少年は会わないうちすっかりと闇夜のように美しい黒い髪に、真っ赤な瞳をした凛々しい青年に成長していました。




青年…いや、魔王は昔のような優しい笑顔で少女に微笑みました。




そして、別れたときと同じように強く少女を抱きしめました。




「約束通り迎えにきた。俺と一緒に行こう。」




魔王は少女に手を差し出しました。




しかし、少女は俯いたまま顔を上げることも、魔王の手をとることもしませんでした。