「春谷くーん!

ぼーっとしない!


はい、これ、解いて」


3月に入ってからというもの、なぜか俺は授業で当てられる回数が増えた。

今じゃ1回の授業で1回当てられるペース。


ま、それも俺が授業中にぼーっとすることが増えたせいなんだろうけど。




『……aの3乗bの5乗』


「はい、正解。

……ここはね~…」


と言って解説を始める柚木ちゃん。

でも俺はそんな柚木ちゃんを見つめるだけで解説は聞かない。


だってさ、話より、やっぱり見てたいだろ。

ここから、こうやって柚木ちゃんを見られるのもあと数回。



「……見つめすぎ、修司」


横からそんな声が聞こえて。

顔を向けると志帆がニヤニヤと笑っていた。




『……うっせーよ』


恥ずかしくなって慌てて俯いた。



人に指摘されるのは恥ずかしい。

ってか恥ずかしすぎる。