「………しゅうじぃ…」


柚木ちゃんはそれから延々と泣き続けた。


よほど、学校でイヤなめにあったんだろう。

むしろ、ここに来るまで泣くのを我慢できたのがすごい。


そして俺の前だけこうして木下柚子という自分をさらけ出してくれたことが何より嬉しかった。


俺は泣き続ける柚木ちゃんをずっと、抱きしめていた。



「……ごめんね、修司」


泣き止んだ柚木ちゃんは俺から離れるとそう呟く。


『もうごめん、はナシ。

俺も言わないから、柚木ちゃんも言わないで』


少し膝を曲げて柚木ちゃんと目線を合わせた。


そしてまつげから垂れた涙の雫を親指で拭う。



『腹、減ったろ?

なんか食いたいもん、ある?』


今日は、とびきり優しくしよう。

今日だけは意地悪はナシ。


そう心に決めてニコッと微笑む。


「……カレー。

修司のカレー、食べたい。」


カレーか。

冷蔵庫の中身を頭の中で思い出しながら頷いた。



『分かった。

作るからリビングで待ってて』