「あたしが、はしゃいでたのがいけなかったの。
あたしは先生なのに、
修司が優しいからってその優しさに甘えてて。
本当は、そんなことしちゃいけないのに
修司、修司、って何かあったらいつも修司に頼ってた。
それが…いけなかったの。
だから…悪いのは…あたしのほうなの…」
『……なんで…っ』
胸が痛かった。
そんなの、違うだろ。
『人が、人に頼って何が悪いんだよ。
俺は…俺は、柚木ちゃんに頼ってもらって嬉しかったんだ』
つい、本音が零れた。
でも俺はいつもそう思っていたんだ。
困ったときの修司。
それで良かった。
ただの柚木ちゃんの生徒じゃなければ
利用されようがなんだって良かった。
少しでも柚木ちゃんの特別になれるなら俺は、構わなかったんだ。
「でも…でもあたしは…先生なんだよっ…」
柚木ちゃんに壁を作られた気がした。
先生と生徒。
それは、高く、厚い壁。
でも。
俺はそれを取っ払いたい。
ずっと、そう思ってた。
今…壊しても、いい?
『先生である前に柚木ちゃんは、
木下柚子っていう1人の人間だろ…っ!』
そして俺は生徒である前に
春谷修司という人間だ。
俺は、柚木ちゃんと接するとき、1度だって柚木ちゃんを教師として見たことはなかった。
そして、柚木ちゃんだって俺と接するとき、生徒として俺を見ていないときがあった。
な、柚木ちゃん。
そうだろ…?
俺の言ったこと、間違ってない…よな?


