記事の内容は、こうだった。


『柚木ちゃんの転勤が正式に決まった。

これは学校側が決めたことで。


理由は生徒と恋愛関係にあったから。


本人は否定しているが

誰かが学校側にこんな話を流した。


『木下先生の隣に住んでいる生徒と木下先生は付き合っている』

と。


学校側は事が大きくなる前に

なかったことにするために柚木ちゃんに転勤を勧めた。


最初は頷かなかった柚木ちゃんだが

渋々、転勤を受け入れた。


転勤先は東北の方にあるうちの学校の姉妹校。


これは、我が部の今年、最大の大スクープである』


簡単に言うと、こんな感じ。



これってさ、俺のこと…だろ?

木下先生の隣に住んでいる生徒、って俺のこと、だろ?


ってことは…なんだよ?

俺のせいで柚木ちゃんが転勤しなくちゃならない、ってことか?


呆然と立ち尽くす俺の腕をまた新が引っ張った。

そして、廊下の隅に連れて行かれる。



『修司…その、なんて言葉かければいいか分かんないけど…

でも、俺は、柚木ちゃんの転勤、修司のせいじゃないと思う』


新はそう言って真っ直ぐに俺を見つめた。



もしかしたら、志帆はこのことを知っていたのかもしれない。

だから、あんな態度をとったんだ。


きっと、そう。


俺にどんなふうに接すればいいか分からなくて

あんな不自然なことを言ってしまったんだ。



………ダメだ、俺。

今日はもう帰ろう。


授業なんて受けてもどうせ、頭になんて入るワケないんだから。



『ごめん、新。

俺、帰る』


心配そうに俺を見つめる新に背中を向けて歩き出す。


柚木ちゃん…大丈夫…なんだろうか。

顔を見たい衝動を堪え、俺は真っ直ぐ家へ帰った。