『もういいよ…柚木ちゃん。
向こう行ってて?』
思わず、柚木ちゃんの手から包丁を取り上げる。
見てるこっちの心臓が保たない。
柚木ちゃんの包丁さばきは。
「ごめんね…修司」
申し訳なさそうな目で俺を見たあと、柚木ちゃんはソファに座った。
「こら、こら、修司くんよ」
と、俺の肩に手を置いたのは加奈さんだ。
「せっかく2人で仲良く料理、させてあげてたのに。」
させてあげてた、って加奈さん、ずっと新と喋ってて、こっちには見向きもしなかったのに。
まさか…それが作戦だとでも言うのか?
「さて、ここはお姉ちゃんの代わりにあたしが腕をふるおうじゃないか!」
そう言って加奈さんは腕まくり。
なんだ。
ただ、文句を言いに来たワケじゃないのか。
『これ、お願いしていいっすか』
加奈さんに柚木ちゃんがやり残した野菜を切る作業をやってもらう。
「ホント、お姉ちゃんはやる気はあるんだけど、センスがないんだよねぇ…」
なんて呟きながら手際よく加奈さんは野菜を切っていく。
こうも姉妹で差がつくとは。
兄弟がいない俺はビックリだ。


