『柚木ちゃんも、加奈さんも、もう立ち直れた…?』
本当はずっと、聞きたかった。
柚木ちゃんがあの失恋から立ち直れたかどうか。
「加奈は…あの通り。
たぶん、佐藤くんが気になり始めてると思う。
だから立ち直ってると思うよ。
あたしは…」
柚木ちゃんは俯く。
そんな様子に胸がざわつく。
「あたしは…完全に、とは言い切れないけどでも、だいぶ立ち直ったよ。
やっぱり片思いの期間が長すぎてあの想いを断ち切るのも時間がかかる。
けどね、あたし…慎くんのこと、考えることが減ったんだ」
柚木ちゃんはそう言って顔を上げた。
「あたし自身もね、なんで減ったのか分かんないんだけど…
でも、修司がいてくれたからじゃないかな、って思うの」
俺が…いたから?
「修司は、生徒だし、意地悪だし、いっつもあたしのこと…からかうけど。
でも、優しいし、修司といると楽しいんだ。
なんでだろうね。」
屈託のない笑顔を見せる柚木ちゃん。
まったく…困った人だ、柚木ちゃんは。
俺の鼓動をこんなに速くさせておいて、
まったくそんなことにも気づいてない。
なんだよ…俺といると楽しい、って。


