「お疲れ、修司」


ずっと、俺と柚木ちゃんを見守っていた加奈さん。

あの場所からベランダは丸見えで。


加奈さんはずっと、ベランダにいた。


だから俺は部屋に戻ってくるとまた、ベランダに出たんだ。


そうすると聞こえてきた加奈さんの声。




「あたしは、よくやったと思うよ。


お姉ちゃんのこと、慰めてくれたし、

我慢もなんとかできた。


もしかしたら今日のことでお姉ちゃん、少しは修司のこと男として見てくれるようになったんじゃない?」


『ないですよ、それは。』


間髪入れず俺は言った。



『俺は生徒ですよ。

柚木ちゃんは先生。


俺がいくら抱きしめても柚木ちゃんはきっと、俺が想いを寄せてることすら気づかないと思う。』



「じゃあお姉ちゃんはなんで修司が抱きしめて慰めてくれてたと思ってるの?」


加奈さんの少し、怒ったような声。

まあ仕方ないか。



『それは…同情してる、って思ってるんじゃないですか?』


はぁ…と、聞こえた溜め息。



「なんかそう思えてきちゃった…

お姉ちゃんなら十分あり得そうだもん」


そう言ったあとにまた加奈さんは溜め息をついた。