「修司はなんでそんな冷静なの?」


『え?』


俺が冷静?

全然冷静なんかじゃないのに。



「自分の好きな人が、今泣いてるかもしれない。

自分の好きな人が、自分じゃない誰かに告白してるかもしれない。


そう考えるじゃん?

そしたらいてもたってもいられなくならない?


無駄にソワソワして。

ヘンな想像ばっかりしちゃうじゃん。


なのに今の修司にそんな様子、全然見られないから。」



『心の中は大荒れですよ。

加奈さんが今言ったこと、全部思いました。


だからこうしてベランダに出てるんですよ』


そっか…と、加奈さんは呟く。



「修司って年下なのに大人っぽくて、自分が子供だなぁ…ってたまに思えてきちゃうんだよね…」


しみじみと呟く加奈さん。


俺が大人?

そんなこと、まったくないのに。


今だって柚木ちゃんがフラれてくれれば。

なんて惨い感情が渦巻いてる。



好きな人の幸せを願える。

それが大人だろ…?