『俺…』


沈黙が耐えられなくて口を開いた。




『好きなんです…柚木ちゃんのこと』


熱で頭の回転が悪い分、きっとよけいなことも言っちゃうんだろう。



『好きで…好きでたまらなくて。

だけど…柚木ちゃんには好きな人がいて。


でも昨日失恋したって聞いて思わず…抱きしめちゃったんです』


加奈さんが俺の隣に座った。



「うん、頑張った」

加奈さんはそう言って俺の肩に手を置いた。



「ホントは言いたかったんでしょ?

俺のところ来いよ、って。


ホントはお姉ちゃんを無理矢理でも自分のモノにしたかったんでしょ?


でも、修司くんは耐えた。

あたしは頑張ったと思うよ。」



ポンポン、と俺の肩を叩いた。


加奈さんの言う通りだった。



告白しちゃいそうだった。


あの雰囲気であんな顔見せられれば誰だって言いたくもなる。

そして、抱きしめたとき押し倒して無理にでも俺のものにしようと思った。


でも、俺は生徒。

そんなことできるはずがないんだ。


柚木ちゃんにそんなことしたって結局は生徒と教師。


どうなるっていう前に気まずくなって終わり。

それが目に見えていたから俺は告白する勇気すら、出なかった。