『うまいっ…』
あれからものの10分でおかゆを作った加奈さん。
あ、いやおかゆってそんなもんで作れるか。
昨日の柚木ちゃんが30分も時間かけて作ちゃっただけだよな。
「でしょー?
お姉ちゃんよりあたしのほうが料理、うまいんだよね」
昨日柚木ちゃんが座ったところに加奈さんが座った。
「ごめんね?辛いのに押しかけちゃって」
大人な加奈さんはやっぱり、大人だ。
『全然っすよ』
無理して笑顔を浮かべる。
きっと、ぎこちない笑顔だったと思う。
「昨日…お姉ちゃんとなんかあった?
家に帰って来たお姉ちゃんの様子が、ヘンだったの」
全てを見透かしたような瞳で俺を見つめる。
『…………………』
何も言えなかった。
きっと、分かってるんだ、加奈さんは。
どんなことがあったのか。
でもあえて核心には触れてこようとしない。
多分、俺が自分から話すのを待っている。


